監督・脚本:新海誠
キャスト:入野自由、花澤香菜
製作年:2013年
製作国:日本(東宝)
上映時間:46分
アニメーション作家・新海誠によるラブストーリー。現代の東京を舞台に雨の日に出会った靴職人を目指す高校生の少年と、年上の女性との恋の行方がつづられる。
本ブログ kj映画談義 第290回 「言の葉の庭」の続きです。
生徒の感想文に「学校さぼっちゃだめでしょ」「生徒と先生との恋愛はご法度でしょ」といったものがあった。書き手は、一年生の真面目な生徒であった。学校に来て一生懸命に勉強しようしようと頑張っている生徒には確かにドクだったかもしれない。靴職人になるという自己実現のためには、高校は卒業資格が取れればいいので、雨の日の午前は新宿御苑に行って学校に行かないというのは、まともな高校生のすることではない。そういうのが許せないのだから本気でそう書いているのなら、ぎりぎりのところで頑張ってる生徒かも知れない。心をくじくような悪いことしたかもしれない。ごめんなさい。
さて、二人の間で交わされる万葉集の和歌のなぞかけは?
(冒頭の番号は「国歌大観」の番号)
巻十一
2513 なるかみの すこしとよみて さしくもり あめもふらぬか きみをとどめむ(鳴る神の 少し響みて 差し曇り 雨も降らぬか 君を留めむ)と年上の女性は歌を詠む
2514 なるかみの すこしとよみて ふらずとも わはとどまらん いもしとどめば(鳴る神の 少し響みて 降らずとも 我は留まらん 妹し留めば)と彼は詠まなくてはならなかった。
柿本人麻呂が歌集に出づ
kj的訳
「雷が鳴り空が曇ってきた。いっそのこと雨が降ってきてくれないかな。そうしたらあなたは、雨のせいでとどまるから。」
「雷など鳴らず、空も曇らず、雨が降らなくても、君がとどまってるのなら、僕はとどまるよ。」
実は、この和歌では、雨は降っていないことに気づく。
突然とどろく雷鳴とともに、愛の告白が始まるのであって、胸にひそむ恋心が雷によって、揺り動かされ、言葉となったのである。
雨の情景がとてもリアルで美しかったという声は多かったが、万葉集の和歌を知れてよかったという感想がないのは意外だった。国語でなく現社でやったからそうなのかもしれない。えっ、現社で!?そうだよ、クールジャパン、かっこいい日本文化の代表と言えば、アニメ。日本のアニメ文化を世界に発信することは、これからの日本経済を考えるうえでとても大事だ。日本のGDPを上げる起爆剤の一つだと思うし、それよりもなによりも、こんな日本的で、文化水準の高い、エンターティメントはない。「言の葉の庭」の監督、新海誠というアニメ作家はやっぱすごいです!
「秒速5センチメートル」もよかったが、3部作であって尺が長い。内容は「言の葉」よりも深いかもしれないが…。個で生きることの耐えがたさと絶望の淵に立つきわどさ。そこから自分を助けてくれるのは記憶のなかの幼い頃の甘い恋心か、いや彼女と再会する偶然性への微かな期待。再会する偶然などあるはずがない。でも、まだあるのなら…。
しかし、50分以内の尺ということで「言の葉」に決定。「私まだ大丈夫かな」という自分への問いかけは、「秒速5センチメートル」から続く新海監督の永遠のつぶやきだ。やっぱ深いなと思う。だからクラスみんなで見て感想を言い合いたかったのだ。
奇しくも、今日3月18日は、柿本人麻呂の命日である。